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  • 歯科開業は集患での失敗に注意!事業承継での開業がもたらすメリットを解説

    腕には自信がある。
    長年の勤務医経験で、技術も知識も十分に身につけてきた。
    でも、いざ自分の城となるクリニックを開業しようと考えた時、ふと大きな不安がよぎる。
    「その腕をふるうべき患者さんが、もし来てくれなかったら…?」

    多くの先生方が、資金計画や物件探しと同じくらい、あるいはそれ以上に頭を悩ませるのが、この「集患」の問題です。
    どんなに素晴らしい医療を提供できても、まずは患者さんに知ってもらい、選んでもらわなければ始まりません。

    この記事では、特に歯科医院の開業における集患というテーマに絞って、その具体的な方法と、新規開業ならではの難しさ、そしてその壁を乗り越えるための「もう一つの選択肢」についてご紹介します。

     

    開業時に効果的なWeb施策は?

     

    地域名での上位表示を狙うMEO対策

     

    今の時代、歯が痛くなったらまず何をするでしょうか。
    多くの方が、スマートフォンで「〇〇市 歯医者」のように検索するはずです。
    このとき、検索結果の上部に地図と一緒に出てくる医院情報、これを上位に表示させるのがMEO対策です。

    難しく聞こえるかもしれませんが、これはインターネットの地図上に、自分の医院の看板を立てるようなもの。
    まずはGoogleビジネスプロフィールという無料ツールに医院の情報を正確に登録し、患者さんからの口コミに丁寧に返信していくことが第一歩です。
    見込み患者さんが「ここなら良さそう」とクリックしたくなるような、魅力的な看板作りを意識してみましょう。

     

    補足

     

    MEOと似た言葉にSEOがありますが、これらは少し役割が違います。
    SEOがブログ記事などWEBサイト全体を対象に、幅広いキーワードでの上位表示を目指すのに対し、MEOは「地域性」が非常に重視されるのが特徴です。
    例えば「インプラント 名医」という全国区の検索より、「渋谷駅 歯医者」のように「今すぐ行ける場所を探している」ユーザーに応えるのが得意。
    だからこそ、住所や電話番号といった基本情報の正確さが、何よりも大切になってくるわけです。

     

    専門性を示すホームページの作り込み

     

    ホームページは、ただのパンフレットではありません。
    24時間働き続ける医院の「顔」であり、患者さんが最初に訪れる「インターネット上の待合室」です。
    診療時間やアクセスといった基本情報はもちろん大切ですが、それだけでは患者さんの心は掴めません。

    どんな想いで開業したのか、どんな治療を大切にしているのかといった「院長の治療哲学」や、インプラントや矯正といった「特に自信のある専門分野」について、あなた自身の言葉でしっかりと語ること。
    それが、患者さんが来院前に抱える不安を安心に変える一番の薬になります。
    もちろん、スマートフォンで見やすいデザインになっていることも、今や必須の条件です。

     

    院長の信頼性を伝えるSNSの活用

     

    InstagramやFacebookといったSNSは、医院の「ファン」を作っていくためのツールです。
    もちろん、治療に関する真面目な情報発信も大切ですが、SNSの良さはもう少し肩の力を抜いたコミュニケーションが取れるところにあります。

    例えば、院内の勉強会の様子や、新しく導入した設備の紹介、時には先生の趣味の話など、人間性が垣間見えるような投稿をしてみましょう。
    「この先生、なんだか相談しやすそうだな」と患者さんに感じてもらうことができれば、それは他のどんな広告よりも強い繋がりになります。
    SNSは、すぐに予約に繋がる特効薬というより、じっくりと信頼関係を育てる漢方薬のようなイメージで活用するのがおすすめです。

    地域に根ざすためのオフライン施策とは?

     

    インターネットを使ったWeb施策が現代の集患の柱であることは間違いありません。
    しかし、歯科医院は地域に根ざして患者さんと長いお付き合いをしていくビジネスです。
    だからこそ、地域の方々に顔と名前を覚えてもらうための、いわば「地上戦」ともいえるオフラインの施策が、同じくらい大切になってきます。

     

    地域住民との最初の接点となる内覧会

     

    開業前にぜひ開催したいのが、地域の方々を招いての「内覧会」です。
    これは単なるお披露目会ではありません。
    多くの方が抱く「歯医者さん=怖い、痛い」というイメージを払拭し、先生やスタッフの人柄に直接触れてもらう絶好の機会なのです。

    院内を探検できるツアーや、お子様向けの歯医者さん体験イベントなどを企画して、まずは「楽しい場所なんだ」と感じてもらうこと。
    治療用の椅子に座ってもらうのではなく、先生と雑談を交わしてもらうこと。
    この最初の温かい接点が、「いざという時に頼れる場所」という安心感に繋がっていきます。

     

    補足

     

    オフラインの施策は、Web広告のように「チラシを1000枚配って何人来たか」を正確に測定するのが難しい側面があります。
    しかし、その本質は数字だけでは測れない「地域への認知と信頼の貯金」なんです。
    看板を見て医院名を覚え、チラシで院長の顔を知り、内覧会でその人柄に触れる。
    これらの体験の積み重ねが、いざ歯が痛くなった時に「あそこの新しい歯医者さんに行ってみよう」という最後のひと押しになる。
    即効性はなくても、じわじわと効いてくるボディブローのような効果があるのです。

     

    診療圏の住民に直接届けるポスティング

     

    チラシのポスティングは古典的な手法ですが、診療圏、つまり医院から通える範囲に住む潜在的な患者さんへ、ダイレクトに情報を届けられる非常に有効な手段です。
    ここで大切なのは、単なる広告ではなく「地域に新しく仲間入りさせていただきました。
    どうぞよろしくお願いします」という“ご挨拶状”の気持ちで作成すること。
    院長の顔写真と地域への想いを綴ったメッセージ、そして内覧会の楽しい案内などを載せることで、無機質な広告にはない温かみが伝わり、手に取ってもらいやすくなります。

     

    地域の信頼を得るための看板や地域連携

     

    駅やバス停、よく使われる交差点などに設置する看板は、いわばその地域の「風景の一部」になるための施策です。
    毎日その前を通る人々は、意識していなくても自然と医院の名前を覚えてくれます。
    すぐに来院に繋がらなくても、「そういえば、あそこに歯医者さんがあったな」という記憶は、いざという時の有力な選択肢になります。

    また、地域の学校の歯科検診を担当したり、近隣の商店に挨拶回りをしてチラシを置かせてもらったりと、地道な地域連携をコツコツと続けること。
    こうした活動の一つひとつが、地域社会の一員としての信頼を育てていくのです。

     

    歯科の開業でゼロから集患する難しさは?

     

    地域の既存医院との信頼性の差

     

    新規開業の医院にとって、最も大きな壁となるのが「信頼」です。
    地域に長年根ざしている歯科医院は、すでに多くの患者さんから「我が家のかかりつけ」としての信頼を勝ち得ています。
    これは一朝一夕には築けない、目には見えないけれど非常に大きな資産です。

    ゼロから開業するということは、この信頼という名の貯金を、ゼロからコツコツと積み上げていくマラソンを始めるようなもの。
    どんなに腕が良くても、その腕を信頼して任せてもらうまでには、どうしても時間がかかってしまいます。

     

    広告費用の継続的な発生

     

    開業当初、医院の認知度はゼロです。
    そのため、まずは医院の存在を知ってもらうために、広告宣伝費という名のガソリンを使い続けなければなりません。
    Web広告やチラシなどを活用して、ようやく数人の患者さんが来てくれる。
    しかし、広告を止めれば、またすぐに患者さんの流れは止まってしまいます。

    特に、口コミや紹介といった自然な集患サイクルが生まれるまでの間は、この広告費という蛇口を開けっ放しにしておかなければならず、開業初期の運転資金を圧迫する大きな要因となりがちです。

     

    補足

     

    広告費は単なる出費ではなく、「投資」と考える視点も大切です。
    例えば、10万円の広告費でインプラントを希望する患者さんが1人来院し、100万円の売上に繋がったなら、それは大成功の投資です。
    しかし問題は、どの広告にいくら使えばどれくらいの反響があるかという「勝ちパターン」を見つけるまで、どうしても試行錯誤が必要になること。
    この先行投資期間の現実を見誤ると、資金繰りが一気に厳しくなってしまうのです。

     

    口コミや紹介患者がいない状態

     

    歯科医院の集患における、最も強力で理想的なエンジン。
    それが、患者さんからの「口コミ」や「紹介」です。
    満足した患者さんが、家族や友人に「あの歯医者さん、すごく良かったよ」と伝えてくれる。
    このサイクルが回り始めると、広告費をかけなくても自然と新しい患者さんが訪れるようになります。

    しかし、当たり前のことですが、新規開業の時点では、この自動集患装置ともいえるエンジンは搭載されていません。
    まずは、来院してくれた一人ひとりの患者さんに全力で向き合い、満足という名の種を蒔き続ける。
    地道な作業ですが、それ以外にこのエンジンを作り上げる方法はないのです。

     

    既存患者を引き継ぐ開業方法とは?

     

    開業時の集患が不要な事業承継

     

    ここまで新規開業の集患の難しさについてお伝えしてきましたが、では、この一番大変なフェーズをショートカットする方法はないのでしょうか。
    実は、あります。
    それが「事業承継」という選択肢です。

    これは、すでに運営されている歯科医院を、設備やスタッフ、そして最も価値のある「患者さん」ごと引き継ぐ開業スタイルです。
    RPGゲームに例えるなら、レベル1から冒険を始めるのが新規開業、ある程度育ったキャラクターと装備を引き継いでプレイするのが事業承継。
    開業初日から、集患の心配をせずに診療に集中できるメリットは計り知れません。

     

    安定した収益基盤を持つ承継開業

     

    事業承継の最大の魅力は、なんといっても開業初月から安定した収益が見込めることです。
    引き継いだ患者さんが継続して通ってくれるため、収入がゼロという期間が存在しません。

    これは、経営面だけでなく、精神面にも大きな安心感をもたらします。
    新規開業のように「来月、患者さんが一人も来なかったらどうしよう…」という不安に苛まれることなく、落ち着いて自分の理想とする医療の実現に向けて歩みを進めることができます。

     

    新規開業のリスクを回避できる第三者承継

     

    「事業承継なんて、親が歯医者でもなければ無理な話だろう」と思っていませんか?それはもう過去の話です。
    今は、親族ではない第三者同士で医院の譲渡・売買を行う「第三者承継」が、ごく一般的な選択肢になっています。

    後継者を探している院長と、開業を希望する若手の先生とを繋ぐ、専門のマッチングサービスも数多く存在します。
    ゼロからすべてを築き上げる新規開業のリスクを避け、すでに完成されたプラットフォームの上でスタートを切る。
    これは、非常に合理的で賢い開業戦略の一つと言えるでしょう。

     

    補足

     

    もちろん、事業承継も良いことばかりではありません。
    前院長先生の治療方針や、長年勤めているスタッフとの人間関係など、自分が「引き継がなければならない」要素も存在します。
    また、設備が老朽化しているケースも少なくありません。
    大切なのは、引き継ぐ前に、その医院の経営状態や設備、スタッフの状況などを専門家と共に入念に調査すること。
    見た目の患者数だけでなく、その中身をしっかりと見極める冷静な目を持つことが成功の鍵です。

    まとめ

    歯科医院を開業し、成功に導くためには、腕の良さだけでは乗り越えられない「集患」という大きな壁が立ちはだかります。

    効果的なWeb施策を打ち出し、患者さんに選ばれる明確なコンセプトを掲げることは、その壁を乗り越えるための重要な武器になります。
    しかし、新規開業には、信頼や口コミをゼロから築き上げなければならないという、時間とコストのかかる厳しい現実があることも事実です。

    もしあなたが今、開業の大きな一歩を踏み出そうとしているのなら、ゼロからすべてを始める道だけでなく、先人が築いた土台を受け継ぐ「事業承継」という道も、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
    それは、あなたの理想の医療を、より早く、より確かな形で実現するための、賢明な近道になるかもしれません。

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