近年、美容医療市場はかつてない活況を呈しています。 市場規模は拡大を続け、患者の需要も旺盛ですが、その一方でクリニックの倒産や廃業が過去最多を記録するという相反するトレンドが同時進行しています。 市場は伸びているにもかかわらず、なぜ経営破綻が増えているのか。 今回は、厚生労働省や民間調査会社のデータをもとにその要因を解説し、これからの時代に求められる開業のあり方として「事業承継」の可能性についてご紹介します。
美容医療へのニーズの高まりとともに、医療の供給側でも大きな変化が起きています。 医師や医療機関が、保険診療から自由診療である美容分野へと急速にシフトしているのです。
厚生労働省が実施した「医療施設調査」によると、直近3年間で「美容外科」を標榜する施設数は43.6%も増加しており、他の診療科と比較しても突出した伸び率を記録しています。 また、「皮膚科」も全診療所の中で最も施設数が増加しており、一般皮膚科に加えて美容皮膚科のメニューを併設するケースが標準化しつつあります。 その一方で、「小児科」などの保険診療を主とする科目は減少しており、日本の医療リソースが、収益性の高い美容分野へと流れている現状が浮き彫りになっています。
この背景には、医師を取り巻く労働環境の変化があります。 保険診療は公定価格であり収益の上限が決まっていますが、自由診療は価格設定が自由であるため、高い収益性を確保できる可能性があります。 また、美容皮膚科は、大掛かりな手術設備が必要な美容外科とは異なり、レーザー機器などの導入で比較的容易に開業できるため、他科からの参入障壁が低いという特徴があります。 過酷な労働環境や低い診療報酬に疲弊した医師が、ワークライフバランスや経済的なメリットを求めて転科する動きも、この傾向に拍車をかけています。
新規参入が相次ぐ一方で、市場からの退出を余儀なくされる事業者も急増しています。 2024年は、まさに「淘汰の年」とも言える状況となりました。
帝国データバンクの調査によれば、2024年の脱毛サロンの倒産件数は14件となり、過去最多を更新しました。 また、東京商工リサーチのデータでは、医療法人が運営するクリニックの倒産や休廃業も過去10年で最多となっています。 これまでは中小零細規模の事業者が中心でしたが、最近では「銀座カラー」や「アリシアクリニック」の運営元など、知名度の高い大手チェーンや大規模に展開していた事業者までもが経営破綻するという異常事態が発生しています。
なぜ市場拡大期に倒産が増えているのでしょうか。 その最大の要因の一つが、「長期コース前払い(前受金)」に依存したビジネスモデルの崩壊です。 将来の売上を先に受け取り、それを原資に広告費を投下して新規客を集める自転車操業的なモデルは、新規客が減少した途端に資金繰りが悪化します。 さらに、競争激化による広告費の高騰も経営を圧迫しています。 東京商工リサーチの分析によると、美容クリニックの平均利益率はわずか2.6%に留まっており、売上はあっても利益が残らない構造的な問題が明らかになっています。 加えて、円安の影響で海外製のレーザー機器や薬剤の仕入れコストが上昇していることも、収益悪化の大きな要因です。
このような厳しい環境下で、これから美容皮膚科を開業するにはどうすればよいのでしょうか。 新規での立ち上げ(ゼロからの開業)のリスクが高まる中、既存のクリニックを引き継ぐ「事業承継」が有力な選択肢として注目されています。
相次ぐ倒産を受けて、金融機関は美容医療業界への融資を厳格化しており、実績のない新規開業への資金貸し出しは非常に難しくなっています。 また、都心部の駅前などの好立地にはすでにクリニックが乱立しており、後発で参入して患者を集めるには膨大な広告費が必要です。 さらに、円安による機器価格の高騰が初期投資額を押し上げており、ゼロからすべてを揃える新規開業は、以前に比べて格段にハードルが高くなっています。
事業承継であれば、既存の内装や医療機器をそのまま引き継ぐことができるため、初期費用を大幅に抑えることが可能です。 これは、昨今の円安や物価高への有効な対抗策となります。 また、前任者が築いてきた患者基盤(カルテ)やスタッフを引き継ぐため、開業初月から一定の売上が見込め、莫大な広告費をかけずに集客できるという大きなメリットがあります。 金融機関の融資審査においても、まったくの新規事業よりも、すでに運営実績のある既存事業を引き継ぐ形の方が、事業の確実性を評価されやすく、資金調達で有利になる可能性があります。
美容医療市場は、「誰でも参入すれば儲かる」という時代から、確かな戦略と経営力が問われる時代へと変化しました。 新規開業の難易度が上がる中、既存の資源を有効活用する事業承継は、リスクを抑えて参入するための賢明な生存戦略と言えます。 今後は、単なる規模の拡大ではなく、質の高い医療サービスを提供し、患者と長期的な信頼関係を築けるクリニックが選ばれる時代になっていくでしょう。
近年、美容医療市場はかつてない活況を呈しています。
市場規模は拡大を続け、患者の需要も旺盛ですが、その一方でクリニックの倒産や廃業が過去最多を記録するという相反するトレンドが同時進行しています。
市場は伸びているにもかかわらず、なぜ経営破綻が増えているのか。
今回は、厚生労働省や民間調査会社のデータをもとにその要因を解説し、これからの時代に求められる開業のあり方として「事業承継」の可能性についてご紹介します。
美容皮膚科への参入が急増している背景
美容医療へのニーズの高まりとともに、医療の供給側でも大きな変化が起きています。
医師や医療機関が、保険診療から自由診療である美容分野へと急速にシフトしているのです。
美容外科と皮膚科の施設数の伸びが著しい
厚生労働省が実施した「医療施設調査」によると、直近3年間で「美容外科」を標榜する施設数は43.6%も増加しており、他の診療科と比較しても突出した伸び率を記録しています。
また、「皮膚科」も全診療所の中で最も施設数が増加しており、一般皮膚科に加えて美容皮膚科のメニューを併設するケースが標準化しつつあります。
その一方で、「小児科」などの保険診療を主とする科目は減少しており、日本の医療リソースが、収益性の高い美容分野へと流れている現状が浮き彫りになっています。
医師が自由診療へシフトする理由
この背景には、医師を取り巻く労働環境の変化があります。
保険診療は公定価格であり収益の上限が決まっていますが、自由診療は価格設定が自由であるため、高い収益性を確保できる可能性があります。
また、美容皮膚科は、大掛かりな手術設備が必要な美容外科とは異なり、レーザー機器などの導入で比較的容易に開業できるため、他科からの参入障壁が低いという特徴があります。
過酷な労働環境や低い診療報酬に疲弊した医師が、ワークライフバランスや経済的なメリットを求めて転科する動きも、この傾向に拍車をかけています。
過去最多となった廃業と倒産
新規参入が相次ぐ一方で、市場からの退出を余儀なくされる事業者も急増しています。
2024年は、まさに「淘汰の年」とも言える状況となりました。
市場は伸びているのに倒産が増えている
帝国データバンクの調査によれば、2024年の脱毛サロンの倒産件数は14件となり、過去最多を更新しました。
また、東京商工リサーチのデータでは、医療法人が運営するクリニックの倒産や休廃業も過去10年で最多となっています。
これまでは中小零細規模の事業者が中心でしたが、最近では「銀座カラー」や「アリシアクリニック」の運営元など、知名度の高い大手チェーンや大規模に展開していた事業者までもが経営破綻するという異常事態が発生しています。
経営を苦しくさせている原因
なぜ市場拡大期に倒産が増えているのでしょうか。
その最大の要因の一つが、「長期コース前払い(前受金)」に依存したビジネスモデルの崩壊です。
将来の売上を先に受け取り、それを原資に広告費を投下して新規客を集める自転車操業的なモデルは、新規客が減少した途端に資金繰りが悪化します。
さらに、競争激化による広告費の高騰も経営を圧迫しています。
東京商工リサーチの分析によると、美容クリニックの平均利益率はわずか2.6%に留まっており、売上はあっても利益が残らない構造的な問題が明らかになっています。
加えて、円安の影響で海外製のレーザー機器や薬剤の仕入れコストが上昇していることも、収益悪化の大きな要因です。
事業承継を活用した開業のすすめ
このような厳しい環境下で、これから美容皮膚科を開業するにはどうすればよいのでしょうか。
新規での立ち上げ(ゼロからの開業)のリスクが高まる中、既存のクリニックを引き継ぐ「事業承継」が有力な選択肢として注目されています。
新規での開業が難しくなっている理由
相次ぐ倒産を受けて、金融機関は美容医療業界への融資を厳格化しており、実績のない新規開業への資金貸し出しは非常に難しくなっています。
また、都心部の駅前などの好立地にはすでにクリニックが乱立しており、後発で参入して患者を集めるには膨大な広告費が必要です。
さらに、円安による機器価格の高騰が初期投資額を押し上げており、ゼロからすべてを揃える新規開業は、以前に比べて格段にハードルが高くなっています。
既存のクリニックを引き継ぐメリット
事業承継であれば、既存の内装や医療機器をそのまま引き継ぐことができるため、初期費用を大幅に抑えることが可能です。
これは、昨今の円安や物価高への有効な対抗策となります。
また、前任者が築いてきた患者基盤(カルテ)やスタッフを引き継ぐため、開業初月から一定の売上が見込め、莫大な広告費をかけずに集客できるという大きなメリットがあります。
金融機関の融資審査においても、まったくの新規事業よりも、すでに運営実績のある既存事業を引き継ぐ形の方が、事業の確実性を評価されやすく、資金調達で有利になる可能性があります。
まとめ
美容医療市場は、「誰でも参入すれば儲かる」という時代から、確かな戦略と経営力が問われる時代へと変化しました。
新規開業の難易度が上がる中、既存の資源を有効活用する事業承継は、リスクを抑えて参入するための賢明な生存戦略と言えます。
今後は、単なる規模の拡大ではなく、質の高い医療サービスを提供し、患者と長期的な信頼関係を築けるクリニックが選ばれる時代になっていくでしょう。