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  • クリニックの開業にはいくらかかる?費用・ルール・手間とコストを抑える方法をご紹介

    クリニックの開業は、多くの医師にとって大きな夢の一つですよね。
    しかし、その夢を実現する一歩手前で、「一体、どれくらいの費用がかかるんだろう?」という大きな壁に突き当たる方は少なくありません。
    特に、診療科目によって必要な設備が大きく異なるため、開業費用の相場は掴みにくいものです。

    いったい何にどれくらいのお金が必要で、どうすればその費用を抑えられるのか。
    そんな漠然とした不安を少しでも解消できるよう、今回はクリニックの開業費用について、科目ごとの違いからその内訳、そして知っておきたいルールまで、順を追ってご紹介します。

     

    開業費用は診療科目別でいくら変わるか?

     

    心療内科

     

    心療内科や精神科は、すべての診療科目の中で最も開業費用を抑えられる可能性があります。
    その理由は、CTや内視鏡のような非常に高価な医療機器を導入する必要がほとんどないためです。
    費用の多くは物件を借りるための費用や、内装の工事費が占めることになります。
    特に、患者さんのデリケートなお話が外部に漏れないよう、防音や遮音に配慮した設計にしたり、複数のカウンセリングルームを設けたりする工事にコストがかかる傾向があります。

     

    内科・小児科系

     

    内科や小児科は、専門的な医療機器がある程度必要になるため、心療内科よりは費用がかさみます。
    例えば、一般的な内科であれば5,000万円から8,000万円程度が目安となり、超音波診断装置(エコー)や心電計などが主な設備投資となります。
    同じ内科でも、呼吸器内科でレントゲンを導入したり、消化器内科で内視鏡システムを入れたりすると、その分費用は上乗せされます。
    小児科は、レントゲンを導入しないケースも多く、4,000万円から6,000万円程度が目安ですが、キッズスペースや感染症対策の隔離室など、内装に工夫が求められるのが特徴です。

     

    眼科・皮膚科系

     

    眼科や皮膚科も、専門的な機器が必要となるため、まとまった初期投資が必要になります。
    保険診療が中心の皮膚科であれば、5,000万円から7,000万円程度が目安です。
    一方、眼科は検査機器だけでも種類が多く、一つ一つが高価なため、8,000万円から1億5,000万円ほどかかることもあります。
    視力や眼圧を測る基本的な機器に加え、目の奥の状態を詳しく調べるための眼底カメラやOCT(光干渉断層計)など、揃えるべき機器は多岐にわたります。

     

    整形外科・歯科

     

    整形外科や歯科は、大型で高価な医療機器が必須となるため、開業費用はどうしても高額になりがちです。
    整形外科では、診断に不可欠なレントゲン装置に加え、広いリハビリテーション室と、そこに設置する多くの物理療法機器が必要です。
    歯科では、患者さんが座る治療台(歯科ユニット)が1台数百万円と高価で、これを複数台設置します。
    さらに、精密な診断のためのCTや、衛生管理を徹底するための滅菌器などにも多額の投資が必要となり、両科目とも1億円を超えるケースも珍しくありません。

     

    美容皮膚科

     

    美容皮膚科は、どこまでの医療を提供したいかによって、開業費用が大きく変動するのが特徴です。
    数千万円で開業することも可能ですが、最新の美容医療機器を揃えようとすると、費用は2億円以上になることもあります。
    例えば、医療脱毛やシミ取りのためのレーザー、リフトアップ効果が期待できるHIFU(ハイフ)など、これらの機器は1台で数百万〜数千万円することもあります。
    また、患者さんに特別な空間を提供するため、内装デザインにこだわり、高級感を演出するケースが多いのも、費用が高くなる一因です。

     

    ◎補足

     

    診療科目ごとの代表的な医療機器に触れましたが、これらの機器の調達方法は、新品を購入するだけではありません。
    初期投資を抑える有効な手段として、「中古品」の活用や「リース契約」が挙げられます。
    中古医療機器は、信頼できる業者から購入すれば、新品の半額以下で導入できることもあり、コスト削減効果は絶大です。
    一方、リース契約は、月々の支払いが発生するものの、購入に比べて一度に出ていく現金を大幅に抑えられるのがメリットです。
    ただし、金利が上乗せされるため、総支払額は購入するより高くなる点には注意が必要です。
    自己資金や融資額とのバランスを見ながら、最適な調達方法を組み合わせることが、賢い資金計画の鍵となります。

     

     

    開業費用の主な内訳は何か?

     

    物件取得費は賃料の10ヶ月分が相場

     

    クリニックを開業するためのテナントを借りる際には、まず「物件取得費」というまとまった初期費用が必要になります。
    これは、月々の家賃とは別に、契約時に一括で支払うお金のことです。
    その内訳は、大家さんに預けておく「保証金(敷金)」、大家さんへのお礼である「礼金」、不動産会社に支払う「仲介手数料」、そして契約月の「前家賃」などです。
    これらを合計すると、大体月額賃料の8〜12ヶ月分、平均して10ヶ月分くらいになるのが一般的です。
    例えば家賃50万円の物件なら、500万円ほどの現金が契約時に必要になる計算ですね。

     

    内装工事費は坪単価30〜50万円が目安

     

    物件を借りたら、次は診察室や待合室など、クリニックとして機能させるための空間を作る「内装工事」が必要です。
    コンクリート打ちっぱなしの何もない状態(スケルトン物件)から作り上げるのか、それとも前のクリニックの設備が残っている状態(居抜き物件)を活かすのかによって、費用は大きく変わります。
    一般的に、坪単価30〜50万円が目安とされますが、デザインに凝ったり、特別な設備が必要だったりすると、さらに高くなります。
    例えば30坪のスケルトン物件なら、単純計算で900万〜1,500万円の内装工事費がかかるイメージです。

     

    医療機器費が科目別の費用差の最大要因

     

    開業費用の中で、診療科目による差が最も大きく現れるのが、この「医療機器費」です。
    診察に使う基本的なものから、専門的な検査・治療機器、さらには電子カルテやパソコン、待合室のソファといった備品まで、あらゆる「モノ」の購入費用が含まれます。
    心療内科のように数百万で済む場合もあれば、眼科や放射線科のように、機器だけで1億円を超えてしまうことも。
    この医療機器をどこまで揃えるかが、開業費用の総額を決めるといっても過言ではありません。

     

    運転資金は最低3ヶ月分の確保が必須

     

    意外と見落としがちですが、非常に重要なのが「運転資金」です。
    クリニックを開業しても、すぐに経営が軌道に乗るわけではありません。
    特に、保険診療の収入は、診療してから実際に入金されるまでに2〜3ヶ月のタイムラグがあります。
    その間にも、スタッフの給料や家賃、医薬品の仕入れ代金などは毎月支払わなければなりません。
    この支払いが滞らないように、あらかじめ手元に用意しておくお金が運転資金です。
    最低でも、月々かかる経費の3ヶ月分、できれば6ヶ月分を確保しておくことが、開業後の安定した経営の鍵となります。

     

    ◎補足

     

    開業には多額の費用がかかりますが、そのすべてを自己資金でまかなう医師は稀で、多くは融資を利用することになります。
    その際、代表的な相談先となるのが「日本政策金融公庫」や「福祉医療機構(WAM)」です。
    日本政策金融公庫は、政府系の金融機関として、新規事業への融資に積極的です。
    一方、福祉医療機構は、病院やクリニックといった医療・福祉分野に特化した融資を行っており、長期で低金利の借り入れが可能な場合があります。
    融資を申し込む際は、なぜこの場所で、どのような医療を提供したいのかを具体的に示した「事業計画書」の作り込みが非常に重要になります。
    この計画書を通じて、金融機関に「この先生にならお金を貸しても大丈夫だ」と納得してもらう必要があるのです。

     

     

    診療科目ごとに特有のルールはあるか?

     

    クリニックの面積は最低12〜15坪から

     

    「クリニックの広さは最低何坪必要ですか?」という質問はよくありますが、実は法律で明確に「何㎡以上」と定められているわけではありません。
    診療科目ごとのルールも特にはありません。
    ただし、各自治体の保健所が、「診察室はこれくらいの広さを確保してくださいね」といった指導基準を設けていることがほとんどです。
    待合室、診察室、処置室、スタッフルーム、トイレといった必要な部屋を配置していくと、現実的には最低でも15坪(約50㎡)程度の広さは必要になるでしょう。
    リハビリ室が不可欠な整形外科などでは、50坪以上の広いスペースが求められます。

     

    レントゲン室には放射線防護の規定あり

     

    整形外科や呼吸器内科などでレントゲン(X線撮影装置)を設置する場合、特別なルールを守る必要があります。
    これは医療法という法律で定められており、レントゲンから出る放射線が、部屋の外にいる人やスタッフに影響を与えないようにするためです。
    具体的には、部屋の壁や床、天井に鉛のボードを貼るなどの「防護工事」が義務付けられています。
    また、部屋の入口には「エックス線診療室」といった標識を掲示し、設置にあたっては保健所にきちんと届け出る必要があります。

     

    心療内科はプライバシー配慮の設計が重要

     

    心療内科や精神科のクリニックでは、患者さんが安心して悩みを打ち明けられる環境づくりが何よりも大切です。
    そのため、設計段階からプライバシーへの配慮が強く求められます。
    例えば、診察室での会話が待合室に漏れないように、壁に遮音材を入れたり、防音効果の高いドアを設置したりします。
    また、他の患者さんと顔を合わせることに抵抗を感じる方もいるため、待合室にパーテーションを設けたり、入口と出口を分けたりといった動線の工夫も重要になります。

     

    ◎補足

     

    クリニックの設計や設備に関するルールはもちろん重要ですが、実はそれ以前の「物件選び」の段階にも、見落としがちな法的な制約が存在します。
    例えば、建築基準法では、地域ごとに建てられる建物の種類が「用途地域」として定められています。
    閑静な住宅街である「第一種低層住居専用地域」などでは、原則としてクリニックの開業が認められない場合があります。
    また、ビルの壁面に大きな看板を設置したいと思っても、自治体の「屋外広告物条例」によって、大きさやデザインに制限がかかることもあります。
    契約してから「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、物件を決める前に専門家へ相談することが大切です。

     

    新規開業より費用や手間を抑える方法はあるか?

     

    事業承継なら初期投資を大幅に削減可能

     

    ゼロからクリニックを立ち上げるのではなく、既存のクリニックを譲り受ける「事業承継」という方法があります。
    この方法の最大のメリットは、初期投資を劇的に抑えられることです。
    内装工事は不要ですし、医療機器もそのまま使える場合がほとんどなので、新規開業に比べて数千万円単位で費用を削減できます。
    場合によっては、新規開業の半額以下の投資で済むケースも。
    もちろん、前の院長先生への対価の支払いは必要になりますが、それを差し引いても大きなコストメリットがあります。

     

    既存の患者やスタッフを引き継げる

     

    事業承継のもう一つの大きな魅力は、地域に根付いてきた患者さんや、経験豊富なスタッフをそのまま引き継ぐ点です。
    新規開業で最も苦労するのが、クリニックの存在を知ってもらい、患者さんに来てもらうまでの「集患」のプロセスです。
    事業承継なら、開業したその日から一定数の患者さんが来てくれるため、すぐに安定した経営基盤を築くことができます。
    また、地域のことをよく知るベテランスタッフがいれば、採用や教育にかかるコストや手間も省け、スムーズに診療をスタートできます。

     

    新規開業に比べ手間や時間を短縮できる

     

    クリニックの開業準備は、一般的に1年〜2年という長い時間がかかります。
    物件を探し、融資の交渉をし、内装の設計・工事を行い、スタッフを採用し…と、やるべきことは山積みです。
    しかし、事業承継であれば、これらのプロセスの多くをショートカットできます。
    物件探しや内装工事の期間が丸々不要になるため、準備期間は半年から1年程度に短縮されるのが一般的です。
    煩雑な行政手続きも、新規の開設許可ではなく、管理者変更などの比較的簡単な手続きで済む場合もあります。

     

    ◎補足

     

    事業承継は、費用や手間を抑えられる非常に魅力的な選択肢ですが、いくつか注意すべき点も存在します。
    例えば、長年勤めてきたスタッフをそのまま引き継いでいるのはメリットである一方、新しい院長であるあなたのやり方に順応してもらえず、人間関係の構築に苦労する可能性もあります。
    また、前院長の方針や地域の評判を良くも悪くも引き継ぐことになるため、自分の理想とする医療を100%実現するには、根気強い改革が必要になるかもしれません。
    こうした「見えにくいリスク」も理解した上で、慎重に承継先を見極めることが成功の鍵と言えるでしょう。

     

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    クリニックの事業承継では、経営状況といった非常にデリケートな情報を扱うことになります。
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    ◎補足

     

    そもそも、なぜ自力で承継先を探すのではなく、専門のコンサルタントに依頼する必要があるのでしょうか。
    実は、後継者を探している優良なクリニックの情報は、公にされることがほとんどないからです。
    多くは水面下で、信頼できる仲介会社を通じてのみ情報がやり取りされます。
    また、承継の対価となる譲渡価格は、非常に専門的な計算に基づいて算出されるため、当事者同士で直接交渉すると、感情的なしこりを残したり、不適切な価格で合意してしまったりするリスクがあります。
    客観的な第三者である専門家が間に入ることで、お互いが納得できる、スムーズで公正な事業承継が実現しやすくなるのです。

     

     

    まとめ

     

    クリニックの開業費用は、心療内科のように比較的抑えられるケースから、専門機器が必要な眼科や整形外科のように1億円を超えるケースまで、診療科目によって大きく異なります。
    その費用の主な内訳は、物件取得費、内装工事費、医療機器費、そして見落としがちな運転資金です。

    もし初期費用を抑えたいのであれば、新規開業だけでなく「事業承継」という選択肢も視野に入れてみてください。
    初期投資を大幅に削減できるだけでなく、患者さんやスタッフを引き継げるため、スムーズなスタートを切ることが可能です。

    開業準備は、決めるべきこと、やるべきことが多く、一人で抱え込むと不安になることもあるかと思います。
    そんな時は、専門家の力を借りるのも一つの手です。
    この記事が、先生の夢の実現に向けた、確かな一歩となれば幸いです。

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