医療法人の経営を長く続けてこられた院長先生にとって、引退は大きな転換期です。
長年培ってきた医院の未来、そしてご自身のセカンドライフ、どちらも不安なく迎えられるよう、綿密な準備が必要となるでしょう。

特に、医療法人の事業承継は複雑な手続きや税務上の配慮が求められ、適切な計画を立てなければ、思わぬ困難に直面する可能性があります。
円滑な引退を実現するためには、どのような選択肢があり、どのようなステップを踏むべきなのでしょうか。

そこで今回は、医療法人の事業承継における課題と、それに対する具体的な解決策を提示します。
将来の不安を解消し、安心して引退を迎えるための指針として、ぜひご活用ください。

医療法人の円滑な引退準備

事業承継の選択肢検討

将来の医院の承継方法は大きく分けて3つの選択肢があります。
まず、親族への承継です。

しかし、親族に医師や歯科医師がいなくても、あるいは承継を希望する親族がいない場合もあります。
そのため、承継を検討する際には、親族の意思や能力、診療科目の適合性などを慎重に検討する必要があります。

次に、第三者への承継（M&A）です。
これは、医院の事業を他の医療法人や個人医師に譲渡する方法で、医院の存続と地域医療への貢献を継続できます。
ただし、M&Aは複雑な手続きと交渉が必要となるため、専門家のサポートが不可欠です。

最後に、閉院（医療法人の解散）です。
これは、医院の事業を完全に停止し、医療法人自体を解散する方法です。
閉院を選択する場合は、残余財産の処理や税務上の手続きなど、多くの課題に対処しなければなりません。

M&A戦略の立案と実行

M&Aを選択する場合、戦略的な立案と実行が重要です。
まず、医院の価値を正確に評価することが必要です。
一般的には「年売法」と呼ばれる方法が使われ、過去の収益や資産状況から評価額を算出します。

次に、買い手となる医療法人や個人医師を探し、交渉を進めます。
交渉では、譲渡価格や支払方法、従業員の雇用条件、診療の継続性など、様々な事項について合意する必要があります。

さらに、M&Aのプロセスは、準備段階、交渉段階、実行段階の3つの段階に分けられ、それぞれに多くの時間と労力を要します。
そのため、引退希望時期の2〜3年前から準備を始めることが理想的です。

税務対策と専門家への相談

事業承継には、税金に関する複雑な問題が伴います。
例えば、M&Aによる譲渡益には譲渡所得税が課税され、閉院の場合は残余財産の処理に際して様々な税金が発生する可能性があります。

また、退職金についても、医療法54条の配当禁止規定に抵触しないよう注意が必要です。
これらの税務上の問題を解決するためには、税理士などの専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。
専門家は、税務リスクを最小限に抑えるための適切な戦略を立案し、手続きをサポートします。
さらに、弁護士は、契約書の作成や交渉、法的な問題に関する助言を提供します。

引退後の生活設計と準備

引退後の生活設計も、十分に準備しておく必要があります。
経済的な面では、譲渡益や退職金、年金などを考慮し、生活費や医療費などを賄えるだけの資金を確保する必要があります。

また、健康面では、定期的な健康診断や予防接種を受け、健康状態を維持することが重要です。
さらに、趣味やボランティア活動など、引退後の生活を充実させるための計画を立てることも大切です。

医療法人経営者のためのサポート

具体的な引退準備ステップ

引退準備は、以下のステップで行うことが推奨されます。
まず、自分の引退時期を決め、その時期を目標に、事業承継の方法を検討します。
次に、専門家（税理士、弁護士など）に相談し、事業承継の計画を立てます。
計画では、事業承継の方法、税金対策、譲渡価格、従業員の雇用問題などを検討します。

その後、買い手候補を探し、交渉を進めます。
交渉がまとまれば、契約を結び、事業承継を実行します。
最後に、事業承継後も、必要に応じて専門家に相談しながら、円滑な運営を継続します。

弁護士税理士への相談

弁護士や税理士は、事業承継において重要な役割を果たします。
弁護士は、契約書の作成や交渉、法的な問題に関する助言を提供します。
税理士は、税金対策、税務申告、相続税対策などのサポートを行います。

これらの専門家の協力を得ることで、事業承継をスムーズに進めることができます。
特に、税務面は複雑なため、専門家のアドバイスなしに自己判断で進めるのは危険です。

事業承継後の運営体制

事業承継後も、医院の円滑な運営を継続するためには、適切な体制を整える必要があります。
例えば、後継者への適切な教育・研修、従業員のモチベーション維持、患者への円滑な引き継ぎ、などです。
これらの課題に対応するため、後継者育成計画、従業員への教育・研修プログラム、患者への周知徹底など、具体的な対策を講じる必要があります。

安心できる未来設計

引退後の生活を安心して送るためには、経済的な基盤を確立することが重要です。
そのため、事業承継による譲渡益や退職金、年金などを計画的に管理し、生活費や医療費などを賄えるだけの資金を確保する必要があります。

また、健康面にも注意を払い、定期的な健康診断や予防接種などを通じて、健康状態を維持・改善する努力も必要です。
さらに、趣味やボランティア活動など、引退後の生活を豊かにするための計画を立て、充実したセカンドライフを送るための準備を始めることも大切です。

まとめ

医療法人の引退準備は、事業承継の選択肢（親族内承継、第三者承継、閉院）、M&A戦略、税務対策、引退後の生活設計という4つの重要な要素から構成されます。
それぞれの段階で専門家（税理士、弁護士）の適切なサポートを得ることが、円滑な事業承継と安心できる引退に繋がるでしょう。

特に、第三者承継（M&A）は医院の存続と地域医療への貢献を継続できる可能性が高く、早期からの準備と専門家の活用が重要です。
ご自身の状況に合わせて最適な選択肢を選び、将来への不安を解消し、充実した引退生活を送る計画を立てましょう。

当社は、これまで多くの診療所や医療法人の事業継承をサポートしております。
後継者に悩む診療所や医療法人をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。